UK出張 Apple Covent Garden で 「Designed by Apple in California」を見る

UK出張 Apple Covent Garden で 「Designed by Apple in California」を見る

ロンドンのAppleでDesigned by Apple in Californiaを発見

ロンドン週末。サービスアパートメントからランニングでCovent GardenにあるApple Covent Gardenへ。すごく広い店内に製品がゆったりと展示されています。1階の中央部分に話題になっている例の本がありました。大小が見開きで見れるように置いてありました。同社のデザインが450点の写真で振り返れる本。2サイズ展開ですが実物は小サイズでもかなり大きく思い重厚感ある仕上がりでした。製品写真のほかに、部品分解図、その製造過程で使用した冶具、加工器具がまとめられていますが、それぞれに説明文等は無く、ビジュアルのみのかなりシンプルな写真集になっています。製品自体は目新しさはないけど、噂レベルで聞いていたアップルしか出来ないような高精度の加工、力技の加工の実際の冶具、加工法は一見の価値あり。以下リンク先のアップルオンラインストアで購入可能です。

Designed by Apple in California – 26 x 32.4cm

Jony Ive以前のアップルデザインは以下からどうぞ

Apple Design 1997-2011 日本語版 -ハードカバー- アップルデザイン―アップルインダストリアルデザイングループの軌跡

           
使い込まれた初代iPhone。金属筐体ならではの経年劣化しても錆びないCMF
iMacのディスプレイ部分の余ったアルミニウム材料をキーボードに再活用していることは噂で聞いていたけどその工程もしっかりと写真に。製造工程も美しい
アルミユニボディのMac mini。中まで切削する専用加工刃
Mac Proのインパクト成型の工程。厚みのある金属板材がだんだん筒形状へ
昔使っていたPowerbook G4 12インチ。今見るとキーボードを際まで配置する思想は現行Macbookに共通する
最後のページは空白で占められていた。取り組んでいる次の革新的な製品のために?

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世界最大級のアップルストア、内装は歴史ある建築にガラスや金属を組み合わせるアップルストア伝統の建築方式。
世界最大級のアップルストア、内装は歴史ある建築にガラスや金属を組み合わせるアップルストア伝統の建築方式。

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これからもアップルデザインの奇跡は起こるのか

なんかこの本ってJony Iveが一線から退いてデザイン全体を統括する立場になって、これまでの自分の栄光をまとめた感じなのかな。ということはiMacからの始まってiPodでの透明+鏡面ステンレス筐体処理、iPhoneでのガラス+アルミアルマイト処理、それをMacに展開等々、Jony Iveが作り上げてきたデザインの時代が終わるということか。Steve Jobsの牽引するコンピューティングへのイノベーションを上手くデザインで引き立たせてきたJony Iveってすごく職人系のデザイナーだと感じる。特に最近のAppleのデザインビデオって形とCMF、製造方法に終始するし、Appleのデザインは常にイノベーティブなコンセプトが先にあり、デザインチームはそのコンセプトをスケールメリットを活かして先進の製造手法を用い、魅力的なデザインに磨き上げてきていた。たとえばiMac。あれってカラフルなスケルトンボディのデザインが注目されるけど、フロッピーを廃したインターネット時代の新しいスーパーパーソナルなデスクトップPCというイノベーティブなコンセプトが無ければ実現しなかったはずだ。そうしたイノベーションがiPod、iPhone、iPadとIveがデザインチームを率いている間に奇跡的に数回起こった。

Apple WatchはSteve後、迷走するコンセプトをデザインが上回ってしまった初の事例だと思う。使ってみたい魅力的なデザインのデバイスだけど意外と使い道がない。コンセプトがしっかりしていないからデザインチームが頑張って魅力的に見せる、日本企業が良くやっているやりかた(今年も何もネタはないけどデザインさん何とか!的な依頼は毎度のことだ)。新しいMacbook ProのTouch Barも、4年も経った後のフルモデルチェンジだったが、それは次のイノベーティブなコンセプトではなく地道な使いやすさの改善だった。それはAppleがもうラップトップやデスクトップにイノベーションを期待していない証拠かもしれない。iPhoneで行っているような継続的な進化で良いと思っているのだろう。結局革新的なデザインはイノベーティブなコンセプトありきだと思う。テレビや冷蔵庫、炊飯器はコンセプトは何十年も前から変わらないものをデザインの力だけで少し変わったように見せる、丸だったものを四角に、また丸に変えるだけ。それでは人の生活を変えたり、歴史に残る製品デザインは絶対に出てこない。

Appleの次のイノベーティブなコンセプトは何だろうか。ARグラスが噂に上がっているけどMicrosoftのHololenzとは一線を画すものにできるのだろうか。iPhoneはいつ非連続的なイノベーションが起こるのか、起こらずに別の製品ラインとして披露されるのか。Ive後のデザインが注力するポイントはCMFではなくてシェアリング、サブスクリプションのような新しい機器のあり方かもしれないし、フレキシブル、スケーラブルな筐体みたいなこれまでの固い物質を削ったり磨いたりするという物理的な概念を壊してくれる新しいデザインも出てくるのではないだろうか。少なくともデザインだけで牽引するような製品は出てこないことを祈る、おしゃれなグラスフレームの組み合わせを金属からジルコニアまで選べますというような。

Jony Ive以前のアップルデザインは以下からどうぞ

Apple Design 1997-2011 日本語版 -ハードカバー- アップルデザイン―アップルインダストリアルデザイングループの軌跡

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